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砂不足

砂は水の次に世界で最も重要な原料です。しかし、自由に使える極小の砂粒が徐々に減少しています。科学者たちはそれをどのように変えていくのでしょうか?

私たちの日々の生活は文字通り、砂の上に築かれています。砂はガラス、歯磨き粉、ヘアスプレー、そして飛行機のエンジンやマイクロチップまで、ありとあらゆる場所に存在します。そしてもちろん、コンクリートにも砂は使われています。国連環境計画(UNEP)によるレポートでは、砂や砂利以上に使われている固形原料は他にないことが明らかになりました。

毎年世界で300億トンの砂がコンクリートミキサーに投入されています。

ドイツ、ベルリン工科大学の建築材料・建設化学学部の学部長、ディートマル・ステファン教授は、「質の高い砂を見つけるのはもはや簡単なことではありません」と述べています。これは主に、建設ブームの影響によるものです。「コンクリート製造では、1トンのセメントを作るのにおよそ3トンの砂が必要です」とステファン教授は述べています。2014年、UNEPは毎年世界中で260~300億トンの砂がコンクリートミキサーに投入されていると推定しました。

毎年世界で300億トンの砂がコンクリートミキサーに投入されています。その量は増え続けています。

以来、この数字は増え続けています。シンガポールや上海、ドバイなどの拡大する大都市では、砂という原料への需要が高まり続けています。ドバイにおける数多くの大規模プロジェクトなど、こうした都市における巨大建設プロジェクトでは大量の砂を消費します。砂は、ブルジュ・ハリファのような巨大な高層ビルの建設に必要なだけでなく、ペルシャ湾に浮かぶドバイの人工島、パーム・ジュメイラの基礎も、砂粒で作られています。メディアのレポートによれば、1億5,000万トン以上の砂がオーストラリアから運ばれたということです。

砂でできているもの

砂がなければ、私たちの世界は違った風景になるでしょう。砂は私たちが使う、ありとあらゆるものに存在するからです。以下に3つの例を挙げました。

ガラス

ガラスは70%以上が珪砂で、約1,500℃の高温で溶融して生成されます。

マイクロチップ

携帯電話は珪砂なしでは機能しません。 珪砂はシリコン含有量が高く、半導体製造の出発材料として機能します。

歯磨き粉

微粒子として、砂は化粧品業界の重要な原料です。 多くのシャワージェル、歯磨き粉、角質除去剤に含まれています。 砂は機械的洗浄剤として機能します。

砂漠には果てしない量の砂がありますが、建設には使えません。

砂漠の国々は砂の輸入に頼っています

一方で、周辺の砂漠の砂は手を付けられないまま残っています。BASF Construction  Solutions社の製品管理部門長オリバー・マザネックは、「砂漠の砂は建築材料として使えません」と述べています。風によって砂漠の砂は舞い上がり、吹き飛ばされます。砂粒は小さく滑らかで、均一になります。その結果、「砂の粒子がかみ合わず、生コンクリートに空洞が形成されてしまいます。そのため、セメントを混ぜる際に必要な水の量が大幅に増え、コンクリートの強度にマイナスの影響を及ぼすのです。」

建設工事の場合、砂粒の端部分が粗くなっている必要があります。しかし、そうした砂は、採石場や川床、そして海にしかなく、採取することで環境に悪影響を及ぼします。UNEPの推定によれば、海岸の4分の3は将来、消滅してしまう可能性があるということです。これは、多くの場合違法である浜辺から直接砂が採掘されることが原因です。また、海底から砂が取り出されることで、海岸がスリップ現象していくことも原因です。 例えば、インドネシアの島々はすべて、この現象の犠牲となっています。波の力でも、砂が流されてしまいます。しかし、内陸部でも不足が生じています。容易に入手できる高ケイ素の石英砂は、徐々に枯渇しつつあります。

“ 手ごろな価格の砂の量が大幅に減少しています。”

ディートマル・ステファン教授

ドイツ、ベルリン工科大学 建築材料・建設化学学部 学部長

代替物の模索

このように砂が不足していることから、砂は科学における優先事項となっています。砂という資源をさらに有効活用する方法を私たちは模索しています。その方法の1つが、2016年以降使われるようになりました。高品質コンクリートにはこれまで適していないとされていた砂を、有用な原料に変えるプロセスをBASFは開発したのです。これには粘土質砂や、雲母などの超微細な添加剤が高い割合で含まれる砂が使われます。粘土や雲母は表面積が大きく、ある程度膨張性のある特殊な構造であるため、大量の水を吸収します。そして、コンクリートのミキシングに必要な超可塑剤も吸収してしまいます。これにより、コンクリートの加工ができないという望ましくない状態が発生していました。

コンクリートは建設において大きな役割を果たしており、その主成分は砂です。

BASFの混和剤「MasterSuna SB」は課題の多い砂の特性を向上させます。水や高性能減水剤が砂によって吸収されないようにして、コンクリートの十分な液化を促す製品です」とマザネックは述べています。これまでは適していなかった砂を使うことが可能になり、既存の砂堆積物をさらに活用できるようになります。この新たな混和剤は現在、フランス、スペイン、ドイツ、英国、オーストラリアでご利用いただけます。これらの国々では、粘土で汚染された砂に大きな影響を受けています。

砂について知らなかった5つの事

【動画をご覧ください(英語)】

豊富に存在する砂漠の細かい砂を活用する方法を、世界各地の研究所で模索しています。例えば、コンクリートのミキシングの際、セメントが効果的に細かい砂粒に固着するよう、フライアッシュで補強するというアイデアもあります。また、セメントの代わりにバインダーとして原油からできたポリエステル樹脂などのプラスチックを使うというアイデアもあります。「これで基本的に問題は解決しますが、量が多い場合は実行可能とは言えません。フライアッシュに関しても、永久的なソリューションとは言えません。これには、将来ほとんど使われなくなる石炭燃焼という発電方法が必要だからです」と建設材料の専門家であるステファン教授は述べています。

砂漠の砂よりもはるかに有望なソリューションが、古いコンクリートです。建物のがれきに汚染物質が含まれていなければ、分離や破砕、微粉砕を使った工程で、比較的効果的に再利用が可能です。こうした鉱物のがれき砂の場合、「再生コンクリート」と呼ぶには、最低25%コンクリートを含んでいる必要があります。これまで、再生コンクリートは主に、道路建設の副層に使用されてきました。住宅建設では、再生コンクリートは今も使われていません。ステファン教授は、「技術的には使えますが、成功するかは価格次第です」と述べています。価格は通常、より高価になりますが、地域によって大幅に変動します。さらに、がれき砂は生砂のような理想的な粒径になっていないため、通常より加工が困難になります。

大きさが重要

砂や砂利は世界で最も重要な資源です。砂と砂利の区別に使われる要素の1つが、直径です。

砂:  ほとんどの砂はすり潰された海の貝殻でできているわけではありません。何千年以上もの年月をかけて風化、腐食した石が川を経由して海に運ばれたもののほうが一般的です。砂は主にケイ素と酸素の複合物である石英で構成されています。石英は地球の地殻に多く存在するため、砂に大量に含まれています。浸食抵抗性が高いことから、石英は耐腐食性が高く、鋼鉄よりも硬いという特徴があります。

砂利: 丸くなった小粒の石が河川に堆積したものが砂利です。砂と同じく、砂利も建設業界ではコンクリートに使用されるなど、最も重要な原料の1つです。

微砂:粒径で定義される微砂/シルト(砂と粘土の間)は、自然界で純度の高い形で存在することはほとんどありません。たいていの場合、砂や粘土と混ざった状態で存在しており、この状態がいわゆる泥です。

※砂のサイズ
砂 : 2~0.063ミリ、砂利: 63~2ミリ、微砂: 0.063~0.002ミリ

未来の建築材料: 再生コンクリートは解体した建物のがれきを使って作られるため、貴重な砂を必要としません。

ステファン教授によれば、がれき砂が新たな建物に使われるコンクリートに占める割合は、1%にも満たないということです。「しかし、手ごろな価格の砂の量が大幅に減少しており、おそらく再生に必要なコストは近いうちに砂よりも安価になるでしょう。研究をさらに進めることで、加速する可能性もあります」とステファン教授は述べています。スイスとオランダはすでに、この問題を見直し始めています。この2か国は再生コンクリートの分野におけるパイオニアと言われています。例えば、チューリッヒの新たな公共の建物には、再生建材が必ず使われています。ステファン教授は、「再生コンクリートは未来の建築材料の1つです」と確信を持って述べています。