シャオハンのストーリー

電気自動車（EV）は世界を変える可能性を秘めていると強く信じている人がいるとしたら、それはシャオハン・リューである。彼はいつだってEVの魅力を説明したり、EVに疑問を抱く人と議論を交わしたりしている。ついこの間も、EVをまったく信用していない車の販売員と議論を交わしたばかりだ。

シャオハンのストーリーを語るためには、時を少し遡る必要がある。彼は決してEVに一目惚れしたわけではない。彼のEVを想う気持ちは、時をかけて少しずつ大きくなっていった。大学で学んでいた理論的メカニズムは「あまり面白くなかった」そうだ。しかし、才能ある多くの学生がそうであるように、理論が実践に適用されて初めて、単なる興味心が好きという感情に変わるものだ。9年前に彼がBASFの正極材料チームに参加して以来、シャオハンはe-モビリティ推進において必要不可欠な人物となった。EVによって世界をより良く変えることができるという揺るぎない信念を胸に、彼は仕事に取り組んでいる。

このような夢を描いていたからこそ、彼はEVの心臓部であるバッテリーの研究に携わりたいと思った。彼による電池材料の研究成果が、EVの安全性、航続距離、寿命に直結する。そして何よりも、彼の研究のおかげで一般のドライバーがより手頃な価格でEVを購入することができるようになるのだ。これこそが、シャオハンが自身の仕事を愛してやまない理由の1つである。「私たちが開発している材料はこれからのe-モビリティに欠かせないものです。この研究に携わって9年も経つと、我が子が成長し、ようやく大人になったかのような感覚を覚えます。愛せずにはいられないでしょう？」と率直な想いを語ってくれた。EVの話になると熱がこもるのだ。「世界の状況とEVがもたらす潜在的な効果を考えてみてください。EVによって世界がよりクリーンになり、二酸化炭素排出量が削減できるのです。EVに魅了されない理由が他にあるでしょうか？」

彼は幾度となく我が子を守らなければならない状況に直面した。あるとき彼は、車の販売員と話す機会があったという。その販売員は、EVがこれからの主流となるのか、それとも一時的な流行に終わるのかわからなかったらしい。

馬車から車へ完全に移行するまでに50年以上かかったのだから、EVが一夜にして市場を席巻するなんてことはないとシャオハンは指摘する。しかし、現在の勢いある開発状況を考えれば、EVは未来だけでなく現代でも活躍するとシャオハンは確信している。内燃エンジンは、その名の通り内部燃焼や制御爆発を連続的に発生させて動力を生み出す。その点においてEVに優位性があるとシャオハンは指摘する。EVのモーターは設計上エネルギー効率が高く、スムーズで静かに駆動するため、乗り心地の向上にも繋がる。また、世界的に見ても電気の方がガソリンよりはるかに安価であり、再生可能資源を用いて電気を供給すれば、環境への負担を大きく減らすことができる。

代替エネルギーが注目されている背景に気候変動があることは言うまでもない。シャオハンは自身の目的をとてもシンプルに捉えている。気候災害の回避だ。それだけではない。彼は自らの仕事を通してさらに大きな使命を果たしていると考えている。「先進国に住む私たちは、地球を次世代に引き継ぐために、責任を持って環境問題に取り組まなければなりません。EVによってそれが可能になるのです」。この想いこそが彼の野心と情熱の源泉なのだ。